題名 年の中途で貸付けを開始した場合の
固定資産税の経費算入時期と経費算入金額の確定について
甲は非事業用としていた土地Aを、令和4年4月20日より店舗用の敷地として貸し付けることにしました。この土地Aに係る納税通知書は令和4年4月4日に届き、その固定資産税20万円は、4月26日に全額を納付しました。この場合、甲の確定申告に係る不動産所得の金額の計算上、土地Aに係る固定資産税はどのように取り扱われるでしょうか?
以下に文章および設例によって説明します。
業務の用に供される資産に係る租税の必要経費に算入される時期は、原則として、申告、更正若しくは決定又は賦課決定によりその納付すべきことが具体的に確定した時とされています(所基通37-6)。ただし、賦課課税方式による租税のうち納期が分割して定められているものについては、各納期の税額をそれぞれの納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することができるとされています(所基通37-6(3))。
したがって、賦課課税方式により納期が分割して定められている租税の必要経費算入時期については、
①その納税通知書の交付を受けた時にその全額を必要経費に算入する
②分割された納期が開始した時にその納期に係る金額を必要経費に算入する
③ 実際に納付した時に納付した金額を必要経費に算入する
という3つの方法のいずれかによることができます。
固定資産税は、1月1日現在の資産の所有者として登録されている者が、その年の4月1日からの1年度分の税をすべて納付することとされており、その納期は、一般的には4月、7月、12月、2月中において、市町村が条例で定める日とされています。そして、その納税通知書は遅くとも納期限の10日前までに納税義務者に交付されることになっています。【以上TKC税務Q&A46102633参照】
設例
題名 未分割財産から生じる不動産所得の法定相続人への配分の仕方の設例
令和元年1月1日に母親甲が死亡しました。甲の法定相続人は子ABCDの4人で、法定相続分はABCDともに1/4です。
令和4年1月1日現在、甲の相続財産は全部未分割です。甲の相続財産には、アパートAとその敷地Bがあり、当該賃貸不動産の賃貸収入から生じる、法定果実であるキャッシュフローの内、令和元年分から令和3年分を各相続人に、法定相続分で分配することになりました。
相続開始時点から現在まで、当該賃貸不動産の管理はAが単独でしています。当該不動産賃貸業に関わる収支の入出金は、Aが開設した○○銀行、○○支店、普通預金E、相続人代表A名義で全て行っています。
このような前提で、各相続人への分配額の算定手順を文章および設例によって説明します。
各相続人への分配額の算定手順
1、キャッシュフローⒶの算定
不動産賃貸業から生み出されるキャッシュフロー(以下CFと記載)は、青色申告控除前の不動産所得と当該賃貸不動産の減価償却費の合計額となります。そこでまず、令和元年から令和3年までの合計額の累計額であるCFⒶを算定します。
2、キャッシュフローⒷの算定
1で算出されたCFⒶから、未分割財産・債務が不動産賃貸業に伴って増減する金額を控除して、CFⒷを算定します。この未分割財産・債務の増減額は、後日、法定相続人ABCDによる未分割財産・債務の遺産分割協議により、分割されるものと考えて、不動産所得から生ずる法定果実の分配額から除外します。
3、キャッシュフローⒸの算定
CFⒷから、相続人Aが管理している普通預金Eより法定相続人ABCDの各人に対して、不動産賃貸業以外の支出として既に払い出された金額を除外して、CFⒸを算出します。
4、各相続人への最終分配額Ⓓの算定
CFⒷの1/4(各人の法定相続分)の金額から、各人の3における不動産賃貸業以外の払い出し額を減算し、各人への最終分配額Ⓓを算定します。その際、この分配額Ⓓがマイナスとなる相続人は、当該マイナス分を自己資金により返還します。
参考 相続財産について遺産分割が確定していない場合、その相続財産は各共同相続人の共有(民法898条)に属するものとされ、その相続財産から生ずる所得は、各共同相続人にその相続分に応じて帰属します。
以下、簡単な設例により、上記の手順を示します。
設例
テーマ 超過特別受益者がいる場合の具体的相続分の算定はどのようにするのか
民法は、第900条で、法定相続分について、規定しています。
第901条で、代襲相続人の相続分について、規定しています。
民法902条1項では、指定相続分について、規定しています。
同条1項では、被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定めることができると規定しています。
このため、遺言者は、遺言によって相続人及び、受遺者に対して、遺言者の相続財産の内一定限度額までは、自由にその承継先を決定することができます。遺言者の相続財産の内、遺言者が自由にその承継先を決めることができる範囲を自由分といいます。これに対して、相続人の相続権を尊重せざるを得ないため、遺言者の意思では、遺言者自身の財産の承継先を自由に決定することができない、遺言者の相続財産の範囲を、遺留分といいます。
遺言者が、遺言で遺言者の相続財産の、承継先を決めることを、相続分の指定といいます。
遺言者によって、遺言で決定された相続分を、指定相続分といいます。(民法第902条)
指定相続分は、遺留分を侵害しない範囲において、法定相続分に優先します。
つまり、法定相続分の規定は、遺言書がない場合の遺産分割の基準を定めたもの、ということです。(民法903条3項)
民法903条では、
1 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその遺贈または贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者または受贈者は、その相続分を受けることはできない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
と規定されています。
さらに、民法904条では、前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお現状のままであるものとみなしてこれを定める。
と規定されています。
「被相続人が、自由分を超えて贈与や遺贈を行ったため遺留分が侵害されたときに、受遺者や受贈者などに対して、その処分行為の効力を奪うこと」を、遺留分侵害額請求といいます。(家庭裁判所における遺産分割・慰留分の実務 第3版 片岡 武 管野 眞一 編著 の513項9l抜粋 以下同著と記載します。)
遺留分を有する相続人を、遺留分権利者といいます。
遺留分権利者は、兄弟姉妹及びその代襲者を除く相続人です。遺留分権利者の、個別的遺留分の割合は、以下の通りです。
遺留分の割合(遺留分率)
民法では、遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合として定められている。(総体的遺留分)
被相続人の財産の3分の1が遺留分である。(民法1042条1号)
被相続人の財産の2分の1が遺留分である。(民法1042条2号)
中略
個別的遺留分とは、総体的遺留分の割合に法定相続分の割合を乗じたものである。」
(同著 502項から503項より抜粋)
以下、遺留分に関して定めた民法の条文の一部を記載します。
民法1043条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とすると、規定しています。
民法1044条贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
と規定しています。
以下、同著の247項と248項から抜粋させていただいて、みなし相続財産と具体的相続分の確定方法について、ご紹介させていただきます。
第8章 特別受益
被相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいた場合に、相続に際して、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすれば、不公平になる。そこで、民法は、共同相続人間の公平を図ることを目的に、特別な受益(贈与)を相続分の前渡しとみて、計算上贈与を相続財産に持戻して(加算して)相続分を算定することにしている(民903条)。
相続開始の時に有していた積極財産(債務を控除しないもの)の額に、相続人が受けた贈与(相続分の前渡しと評価されるもの)の額を加算して、「みなし相続財産」とする。
「みなし相続財産」を基礎にした上で、各共同相続人の相続分を乗じて各相続人の相続分(一応の相続分)を算定し、特別受益を受けたものについては、この額から特別受益分を控除し、その残額をもって特別受益者が現実に受くべき相続分(相続開始時点での具体的相続分)を確定する。
このように特別受益を相続分の算定の基礎に参入する計算上の扱いを、「持戻し」と称している。民法903条は、相続人中に遺贈や贈与を受けた相続人がいる場合には、これを考慮して相続分を算定することが相続人の公平にかない、被相続人の意思にも合致するという理念に基づいている。
設例
今回の設例は、遺言者が遺言者の相続財産の一部についてのみ、遺産分割方法の指定をしていた場合に、遺言者の残りの相続財産は、どのように相続されるのか。
相続人の具体的相続分は、どうなるのかについての計算例です。
この結果、被相続人甲の相続財産の内、被相続人甲による、指定相続分は65万円となっています。
この場合、被相続人甲の、残りの相続財産35万円は、どのように相続されるのかという、設例です。
被相続人が、遺言書あるいは、別の書面で、この遺贈(相続させる遺言も、遺贈とみなされます。)について、持戻し免除の意思表示がされていた場合。あるいは、裁判所が総合的な被相続人と相続人の生前の生活状況等から判断して、被相続人甲に持戻し免除の意思表示があったと認定した場合には、指定相続分以外の財産35万円は、法定相続分で相続されます。
つまり、A B C Dは、それぞれ法定相続分である1/4である、35/4=8.75万円を相続します。この結果、法定相続人の最終的な具体的相続分は、Aが38.75万円、Bが28.75万円、Cが18.75万円、Dが13.75万円となります。
A B C Dの個別的遺留分割合は、1/2×1/4=1/8です。
このため、個別的遺留分は、100×1/8=12.5万円となります。A B C D 4人の具体的相続分は全員が、個別的遺留分12.5万円以上となっているため、遺留分侵害額請求はされないことになります。
相続人A B C Dの法定相続分は25万円であり、特別受益を控除した具体的相続分を算定すると、仮の各相続人の具体的相続分は下記の通りとなります。
A 25万円-30万円=-5万円・・・0円とみなす。
B 25万円-20万円=5万円
C 25万円-10万円=15万円
D 25万円-5万円=20万円
上記の計算より、Aはマイナス5万円となっており、法定相続分を超えて財産を受け取ることになります。このように、法定相続分を超えて、特別受益を受けている者を「超過特別受益者」といいます。
超過特別受益者であるAは、法定相続分を超えた5万円分の財産を相続財産に持戻す必要はありません。
超過特別受益者がいる場合の、具体的相続分の算定方法には、実務では次のように計算するのが主流となっています。(具体的相続分基準説)
特別受益を除いた35万円を現実の分割の対象となる遺産とし、各相続人の仮の具体的相続分の割合で按分します。この場合、超過特別受益者Aの具体的相続分は0とします。
A 0円 他に30万円の遺贈
B 35万円×5/(0+5+15+20)=4.375万円 他に20万円の遺贈
C 35万円×15/(0+5+15+20)=13.125万円 他に10万円の遺贈
D 35万円×20/(0+5+15+20)=17.5万円 他に5万円の遺贈
未指定の相続財産の額の合計額 35万円
この結果、法定相続人の最終的な具体的相続分は、Aが30万円、Bが24.375万円、Cが23.125万円、Dが22.5万円となります。
A B C D 4人の具体的相続分は全員が、個別的遺留分12.5万円以上となっているため、遺留分侵害額請求はされないことになります。
相続税計算のしくみについて
(国税庁ホームページ 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし より抜粋)
平成27年1月1日施行
事例に基づき、相続税の計算の仕組みを説明します。
事例
・「相続税がかかる財産」の合計金額 2億2千万円
・「債務・葬式費用」の合計金額 2千万円
・「相続人」 妻、子2人の計3名
・ 財産の分割については、妻 1億4千万円、子 4千万円ずつ
・ 債務、葬式費用の負担は、妻が2千万円 全額負担 とした。
計算方法
1.はじめに、各人の課税価格を計算します。
相続税がかかる財産から債務・葬式費用を引きます。
※③各人の課税価格がマイナスになる場合は0として計算します。
他の相続人の課税価格と相殺することは出来ません。
2.次に、課税遺産総額を計算します。
1で算出した課税価格の合計額(上記③)から基礎控除額を引きます。
課税価格の合計額 2億円
※基礎控除額は、3千万円+(600万円×法定相続人の数)の算式で計算します。
※基礎控除額を引いた結果が0、マイナスになる場合は相続税の申告は必要ありません。
3.次に、相続税の総額を計算します
2で算出した課税遺産総額を法定相続分の比率(表b)で按分しそれぞれの税率(超過累進税率)をかけて税額を計算します。
課税遺産総額 1億5千200万円
相続税の総額 ①+②+③=2千700万円 となります。
(表a)相続税の速算表
※計算方法 妻 7千600万円×30%-700万円=1千580万円・・・①
子 3千800万円×20%-200万円=560万円・・・②、③
図の中の④、⑤、⑥は(表a)の速算表における控除額に対応し、
④は1千万×(30%-10%)+(3千万-1千万)×(30%-15%)+(5千万-3千万)×(30%-20%)=700万円
⑤、⑥は1千万×(20%-10%)+(3千万-1千万)×(20%-15%)=200万円
となっています。
(表b)法定相続分
※子、父母、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上あるときはそれぞれ均等になります。
4.最後に、納付すべき相続税額を計算します。実際の相続割合で按分します。
3で算出した相続税総額は2千700万円となりましたので、課税価格の合計金額2億円に対して平均税率は、 2千700万円÷2億円=13.5% となります。
実際の相続割合で按分します。
各種控除額を差し引きして納付税額を計算します。
この事例では※「配偶者に対する相続税額の軽減」のみ適用があったとします。
以上の計算の結果、納付すべき税額は妻は0円、子がそれぞれ540万円となります。
※「配偶者に対する相続税額の軽減額」について
相続または遺贈により財産を取得した者が被相続人の配偶者であるときは、一定の限度のもとにその配偶者の相続税額が軽減されます。
配偶者の相続税額の軽減額は、次の算式により計算します。
イ・・・その相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を乗じて算出した金額に相当する金額(その金額が1億6千万円に満たない場合は1億6千万円)
ロ・・・その相続又は遺贈により財産を取得した配偶者に係る相続税の課税価格に相当する金額
この事例では、
イは 課税価格の合計額2億円に対する法定相続分2分の1=1億円
1億6千万円に満たないため イ・・・1億6千万円
ロは 妻の課税価格なので1億2千万円
イとロの少ない方の金額は1億2千万円
算式にあてはめると、
(5)貸家の駐車場用の敷地で一体利用の敷地には、貸家の入居者以外の方の、
自動車の月極駐車場敷地として賃貸しないようにします。
たとえ、一台であっても入居者以外の車の月極駐車場として利用されていますと、
貸家建付地としての評価がなされるのは、貸家の敷地部分のみとなります。つまり、
駐車場敷地全体が自用地評価となってしまいます。
(6)所有土地について広大地評価が、適用できるように準備しておく。
広大地の定義
その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で
都市計画法第4条(定義)第12項に規定する開発行為を行うとした場合に
開発許可が必要となる面積基準以上の土地(注1)で、公共公益的施設用地
(主には、開発区域内の開発道路のこと)の負担が必要と認められるものの
うち、一定の条件を除く土地(注2)のことをいいます。
広大地の評価方法(その広大地が路線価地域に所在する場合)
広大地の評価額 = その広大地の面する路線の路線価×広大地補正率 × その広大地の地積
広大地補正率 = 0.6 - 0.05 × 広大地の地積 / 1,000㎡
広大地補正率は、0.35が下限となります。
(財産評価基本通達24-4より要約を抜粋)
(注1)開発許可が必要となる面積三大都市圏の市街化区域 500㎡以上
(注2)一定の条件を除く土地の具体例(除外例の主なものの例示)
ただし、CおよびDの中には広大地評価ができる場合があります。
A 路線価図の地区区分が大工場地区内にある土地
B 経済的に最も合理的であると認められる開発行為(最有効使用)が
中高層の集合住宅を建築することとなる土地
(容積率300%以上の土地は、広大地評価できません。)
C 既に開発を了しているマンション・ビル等の敷地用地
D 現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地
(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)
E 開発道路を入れるより、旗竿状開発の方が最有効使用となる開発方法となる土地
具体例
図1の土地の場合には、戸建て住宅として開発し分譲する場合、開発道路を入れる分譲方法が
最も高く売却できると考えられるため、広大地評価ができる可能性があります。
図2の土地の場合には、戸建て住宅として開発し分譲する場合、開発道路を入れることなく、
羊羹切りする方法が最有効使用であると考えられるため、広大地評価はできません。
図1のように、土地の間口に対して、奥行きの比率が、2倍超の奥行長大な土地であっても、
図3のように、旗竿地による宅地開発がその地域の戸建て分譲用地の開発方法として一般的
(最有効使用となる場合)な地域の場合には、広大地評価は認められません。
広大地評価を活用した相続税対策
隣地を買い増すことにより、500㎡以上の一体利用の土地となり、土地の相続税評価額を
計算するにあたりまして、「広大地評価」が可能となる土地があれば、あらかじめ隣地を購
入しておきます。また、土地の活用を一体化することにより、「広大地評価」が可能となる
土地があれば、あらかじめ、土地の活用を一体化しておきます。
(7)死亡保険金の非課税枠が、残っていれば終身保険や定期保険に加入する。
生命保険金は、法定相続人1人につき500万円が非課税財産となります。
(注)相続税法上の法定相続人は、相続の放棄をした人があっても、その放棄がないものとした場合の
相続人の数をいいますが、被相続人に養子がある場合には、「法定相続人の数」に含める養子の数につ
いては、次のそれぞれに掲げる人数までとなります。
イ 被相続人に実子がある場合 1人
ロ 被相続人に実子がない場合 2人
(8)死亡退職金の非課税枠が、残っていれば小規模企業共済制度に加入する。
死亡退職金は、法定相続人1人につき、500万円が非課税財産となります。
(法定相続人の定義は、(7)と同じです。)
ただし、不動産賃貸業の場合には、営む不動産賃貸業が、事業的規模(賃貸物件が5棟10室以上であ
るという条件を満たすことをいいます。)と認められ、かつ給与所得者でないことが加入の条件となり
ます。
(9)相続財産を譲渡した場合の取得費の特例を活用します。 措法39
相続又は遺贈により取得した財産を、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日
以後3年を経過する日までの間に譲渡した場合には、相続税額の一部を取得費として加算できる特例があ
ります。
譲渡資産が相続により取得した土地等の場合には、相続又は遺贈により取得したすべての土地等に対応す
る相続税が、その譲渡した土地等の取得費として加算できます。(措令25の16)
ただし、平成27年1月1日以後に開始する相続または遺贈により取得した土地等からは、その譲渡した
土地等に対応する相続税相当額のみが、取得費として加算されることになります。(新措法39)
(1)生前贈与を活用する。
① 暦年贈与を活用します。(相続税の限界税率未満となるように、暦年贈与をします。)
ⅰ 民法上の贈与 民法549条 「贈与は当事者の一方が、自己の財産を無償で相手方に与える
意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と規定されています。
贈与者による、贈与の申込みの意思表示と、受贈者による受諾の意思表示の合致があってはじめ
て成立する諾成契約です。
ⅱ 名義預金についての留意点
被相続人以外の者が、預金名義人であっても、当該名義にかかわらず、被相続人の財産であると
される場合もありますので、ご注意下さい。
預金の真の所有者を判定する基準は、概ね次のA B Cです。
税務調査の際には、これらの観点から総合的判断を受けることになります。
A その預金の最初の拠出者は、どなたでしたか。(資金拠出者基準)
B その預金の、受贈者が通帳や定期預金の証書および銀行印の日常の管理をされていましたか。
また、その預金の預け入れや引き出し、満期時の書き替え等は受贈者がされていましたか。
(管理者基準)
C その預金の受贈者が、贈与者の許可を得ることなく、自由にその預金を引き出して、
自分のために使える状態にありましたか。(支配者基準)
② 扶養義務者から生活費または、教育費として受けた贈与財産については、贈与税は非課税と
されています。(相法21の3①二)
ⅰ 扶養義務者とは、法律的には配偶者、直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて
扶養義務者となった三親等内の親族をいいます(民法877)が、実務上は、これらの者の他、
三親等内の親族で生計を一にするものについてもこれに含めて取り扱っています。
(相基通1の2-1)
ⅱ 生活費とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費は除きます。)をいい、
治療費、養育費、その他これらに準ずるものも含めてみることになっています。
(相基通21の3-3)
ⅲ 教育費とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、
それには義務教育に限らず、高校、大学、各種学校等も含まれます。(相基通21の3-4)
ⅳ 生活費又は教育費に充てるものとして贈与を受けた財産のうち贈与税が非課税とされるのは、
生活費又は教育費として必要の都度、直接これらの用に充てるために贈与によって取得した
財産に限られます。(相基通21の3-5)
暦年贈与活用の損益分岐点についての考え方
平成27年以後の相続および贈与分
設例
被相続人甲の相続財産 2億円
相続人 子供乙 子供丙 二人
① 第一段階 贈与累積額5800万円までの贈与
贈与税特例税率20%まで分 + 基礎控除 = 600万 + 110万 = 710万
5800万 ÷ (710万 × 2人) = 約4年
相続人一人当たり710万円を、相続人二人に4年間贈与する。
② 第二段階 贈与累積額5800万超9800万以下までの贈与
贈与税特例税率15%まで分 + 基礎控除 = 400万 + 110万 = 510万
4000万 ÷ (510万 × 2人) = 約4年
相続人一人当たり510万円を、相続人二人に4年間贈与する。
③ 第三段階 贈与累積額9800万超13800万以下までの贈与
贈与税特例税率10%まで分 + 基礎控除 = 200万 + 110万 = 310万
4000万 ÷ (310万 × 2人) = 約6年
相続人一人当たり310万円を、相続人二人に6年間贈与する。
④ 第四段階 贈与累積額13800万超15800万以下までの贈与
贈与税特例税率0%まで分 + 基礎控除 = 0万 + 110万 = 110万
2000万 ÷ (110万 × 2人) = 9年
相続人一人当たり110万円を、相続人二人に9年間贈与する。
③ 贈与税の配偶者控除の特例を活用します。
婚姻期間が、20年以上である場合には、配偶者へ居住用不動産を贈与した場合には、
相続税評価額 2,000万円までの贈与は、贈与税が非課税となります。
④ 住宅取得資金の贈与税の非課税規定を活用します。
⑤ 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度を活用します。
⑥ 賃貸物件の建物のみを贈与して、賃貸収入が相続人に入るようにします。
贈与された建物の敷地に対して、地主に支払う年間地代は、その敷地の年間の固定資産税および
都市計画税の合計額以下となるようにします。これにより、受贈者は、その建物敷地を使用貸借
契約により地主から借りていることになり、借地権のみなし贈与課税を受けなくてすみます。
また、貸家の預かり敷金も、その総額を贈与者名義の預金口座から、受贈者名義の預金口へ振り
替えておく必要があります。これを忘れると、貸家の贈与者は、預かり敷金の返済義務を、貸家
の受贈者に肩代わりさせることになり、不動産等に対する、負担付き贈与通達の対象となるため、
貸家の贈与税の課税価額は、時価評価額となってしまいます。また、同様に賃貸物件のローンを
受贈者に引き継ぐという、条件付きで賃貸建物を贈与すると、上記の負担付き贈与通達の対象と
なります。この場合、贈与者には、免除されたローンの残額相当額の対価で、その賃貸建物を譲渡
したとみなされて、譲渡所得税が課税されます。他方、受贈者には、賃貸建物の時価相当額から、
引き継いだローンの残高を控除した残額分の贈与を受けたものとして、贈与税が課税されます。
さらに、賃貸物件の建物の敷地が、被相続人の所有である場合には、建物の贈与後に、賃貸物件の
建物の入居者が入れ替わると、入れ替わった貸家部分に対応した敷地部分の評価は、自用地評価と
なります。
(2)養子縁組制度を活用する。
相続税法においては、次の①から④の規定を適用する場合にのみ、法定相続人に含まれる養子の人数を、
次のアとイの人数までに制限しています。
ア 被相続人に子がある場合には一人までとする。
イ 被相続人に子がない場合には、二人までとする。
① 相続税の総額の計算
② 相続税の非課税財産の死亡保険金の非課税限度額
③ 相続税の非課税財産の死亡退職金の非課税限度額
④ 遺産に係る基礎控除額
したがって、例えば被相続人に子がある場合で、法定相続人でない孫の内に障害者が二人みえた
場合には、障害者である二人の孫を、二人とも被相続人の養子とし、養子となった孫が二人とも、
相続財産を相続し、相続税が課税される場合には、障害者控除はその孫養子が二人とも受けるこ
とができます。
(3)自用家屋の相続税評価額が固定資産税評価額となることを活用する。
① 子供や孫の居宅を建築するか、マンションを購入し、家屋の名義を建築資金を出した父母、祖父母
にしておき、子や孫に使用貸借により居住させるようにします。(同様に、自動車を父母や祖父母の
登録名義で購入し、使用貸借で子供や孫に使用させた場合も、被相続人名義で購入した自動車が相続
財産となります。)
② 生前に居宅のリフォームをすませておきます。
ただし、そのリフォームが資本的支出(居宅のリフォームにより市場価値の増価が生じたと認められ
る場合)とみなれさた場合には、リフォームに支出した価額の70%相当額から、リフォーム時点から
相続開始時点までの、経過年数分に対応した、定率法による減価償却費の累計額を控除した残額が、
居宅の固定資産税評価額とは別の財産(居宅の資本的支出)として、課税財産となります。
(4)宅地造成が必要な土地は、あらかじめ造成工事をすませておきます。
所有する土地の中に、将来宅地にするために、盛り土や切り土、擁壁工事等が必要となる、市街化区域
内の農地や山林、原野、雑種地等があれば、あらかじめ、それらの土地の宅地造成をすませておきます。
相続財産である土地を評価する場合の造成費の控除につきまして
① 道路面より高い市街化区域の土地(農地 雑種地等)を宅地比準方式により評価する場合には、
道路面より高い部分の擁壁の敷設費用は、その土地の宅地としての評価額から、宅地造成費とし
て、擁壁の敷設費用は控除されません。
② 道路面より低い市街化区域の土地(農地 雑種地等)を宅地比準方式により評価する場合には、
その土地の宅地としての評価額から、宅地造成費として道路面の高さまでの盛土費用と、道路面
の高さまでの擁壁の敷設費用等が、各国税局で定められた単価により控除できます。
Ⅱ 賃貸住宅を建築した場合の相続税の軽減額の試算事例
①事例の前の基礎知識につきまして
貸家建付地の評価額 = その宅地の自用地としての価額 - その宅地の自用地としての評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
(注)借家権割合は、全国一律30%です。
賃貸割合 =Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計額/当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
今回の事例では、借地権割合を50%と仮定します。
また、賃貸割合は一括借り上げを前提として100%として計算します。
②貸家の評価額 = 当該家屋の固定資産税評価額(B) × (1-借家権割合) × 賃貸割合
(注)借家権割合は、全国一律30%です。賃貸割合は、①の賃貸割合と同じ定義です。今回の事例では、賃貸割合は一括借り上げを前提として100%として計算します。
③家屋の固定資産税評価額C = 相続税評価額Cと実際の建築価額Dとの比率C/Dはおおよそ、0.5から0.7くらいだとされています。今回の事例ではこの比率を0.6になるものとして計算します。
前提条件
事例2の状態から、相続税対策として宅地Aに賃貸住宅(建築価額 1億円)を、全額銀行借入で建築した場合の相続税の軽減額を試算してみましょう。
事例3
(1)被相続人 甲 享年80歳
相続人 妻 乙 相続開始時点の年齢 75歳
長男 丙 〃 50歳
長女 丁 〃 45歳
(2)相続開始日 平成27年1月1日
(3)被相続人Aの相続財産及び債務
普通預金 3,180万円
終身保険の死亡保険金 3,000万円(内生命保険金の非課税金額1,500万円)
宅地A 更地(貸家建付地) 地積 800㎡
相続税評価額 自用地評価額 8,000万円 - 8,000万円 × 借地権割合0.5 ×
借家権割合0.3 × 賃貸割合1.0 = 6,800万円
宅地B 自宅敷地(自用地) 地積 400㎡ 相続税評価額 6,000万円
小規模宅地等の特例
妻乙が、単独で宅地Bを相続するものとします。この場合、特定居住用宅地等の特例の適用を
受けることができるため、減額される宅地Bの評価額は次の通りとなります。
6,000万円 × 330/400 × 0.8 = 3,960万円
小規模宅地等の特例適用後の 宅地Bの課税価額
6,000万円 - 3,960万円 = 2,040万円
居宅C 木造二階建て(宅地Bに建築) 床面積 200㎡ 相続税評価額 1,000万円
被相続人甲と妻乙の二人のみで、同居していた。
賃貸住宅D 建築価額1億円
固定資産税評価額 1億円 × 0.6 = 6,000万円
貸家としての評価額 = 自用家屋の評価額6,000万円 × (1-借家権割合0.3) ×
賃貸割合1.0 = 4,200万円
債務 銀行借入金E 1億円
(4)被相続人の課税価格の合計額 15,720万円 - 宅地Aの貸家建付地になることによる
評価減額1,200万円 + 賃貸住宅Dの相続税評価額4,200万円 - 銀行借入金E1億円
= 8,720万円
(5)遺産に係る基礎控除額3千万円 + 法定相続人3人 × 600万円 = 4,800万円
(6)課税遺産総額 (4)-(5)= 3,920万円
(7)相続税の総額
妻乙の法定相続分に応ずる取得金額 1,960万円
妻乙の相続税の総額の基となる税額 244万円・・・ア
長男丙の法定相続分に応ずる取得金額 980万円
長男丙の相続税の総額の基となる税額 98万円・・・イ
長女丁の法定相続分に応ずる取得金額 980万円
長女丁の相続税の総額の基となる税額 98万円・・・ウ
相続税の総額 ア+イ+ウ= 440万円
結論 賃貸住宅Dを建築することによる、相続税の軽減額
1,657万円 - 440万円 = 1,217万円
ただし、妻乙が(4)課税価格の合計額の1/2を相続した場合には、配偶者の税額軽減額が、また事例2では828.5万円となります。また、事例3では、220万円となります。このため、相続税の納税額実際の減少額は、1,217万円の1/2の608.5万円となります。仮に、被相続人甲が自己資金を使って賃貸住宅を建築した場合でも、相続税の軽減額は事例3と同じ額となります。
賃貸住宅建築前
非課税金額及び小規模宅地等の特例適用前と後の課税価格の合計額
① 普通預金 3,180万円
②死亡保険金 3,000万円
生命保険金の非課税金額 1,500万円 ②’
③ 宅地A(自用地) 8,000万円
④ 宅地B(自用地) 6,000万円
小規模宅地等の特例による評価減額 ④’
6,000万 × 330/400 × 0.8 = 3,960万円
⑤ 居宅C(自用家屋) 相続税評価額 1,000万円
②’ ④’
(A)21,180万円 - (1,500万円 + 3,960万円) = 15,720万円
賃貸住宅建築後
③’宅地A(貸家建付地)の評価額
8,000万 × {1-(0.5 × 0.3 × 1.0)}
=6,800万円
⑥ 賃貸住宅D 建築価額 = 銀行借入額
銀行借入額 = 1億円
賃貸住宅Dの相続税評価額
6,000万 × (1 - 0.3) × 1.0 = 4,200万円
賃貸住宅建築による課税価格の減少額
(A)-(B)= 15,720万円 - 8,720万円
= 7,000万円
[内訳](1)宅地Bが自用地から貸家建付地になることによる評価減額
8,000万円 - 6,800万円 = 1,200万円
(2)賃貸住宅Dの建築価額と相続税評価額の差額分の評価減額
1億円 - 4,200万円 = 5,800万円
(1)+(2)= 7,000万円
Ⅰ相続税負担を最小化させるための配偶者への相続額の算定例
事例2の図解
① 被相続人の相続財産合計額 21,180万円
② 死亡保険金等の非課税額 1,500万円
③ 小規模宅地等の特例による評価減額 3,960万円
①-②-③= 15,720万円
質問 一次相続と二次相続の相続税の合計額が、最も少なくなるようにするために、
今回の一次相続で配偶者は、いくらの相続財産を相続したらよいでしょうか。
答え 一次相続では、子供は相続財産に対して、平均税率10.5%で課税されます。
そこで二次相続では、子供の相続財産に対する限界税率が10%以下となるように、
すればよいことになります。
二次相続時点での、配偶者の相続財産(相続税評価額)=X
Xの上限=二次相続の基礎控除+法定相続分に応ずる相続税の限界税率に
10%が適用される相続財産の価額×法定相続人数
=4200万円+1000万×2人=6200万円
一次相続時点の配偶者の財産合計額(相続税評価額) Y
一次相続で配偶者が相続した財産(相続税評価額) A
一次相続で配偶者が受けた小規模宅地等の特例による評価減額 a1=3960万
一次相続で配偶者が受けた死亡保険金等・死亡退職金等の非課税額 a2=1500万
一次相続時点における配偶者自身の財産(相続税評価額) B=5000万
(ただし、被保険者が配偶者である生命保険金額を加算した相続税評価額とする。)
Y=A+a1+a2+B=A+3960万+1500万+5000万=A+10460万
二次相続までの配偶者の財産の増減額(相続税評価額) Z
①雑所得(年金等)や不動産所得、給与所得、不動産等の譲渡所得による増加額
①=2200万
②生活費(医療費及び支払予定の生命保険料を含む。)の支出による減少額
②=3000万
③相続人および、相続人の親族への贈与などによる減少額
③=3000万
④二次相続における葬儀費用及び債務
④=200万
二次相続で配偶者が受ける小規模宅地等の特例による評価減額 z1
z1=3960万
二次相続で子が受ける死亡保険金等・死亡退職金等の非課税額 z2
z2=1000万
Z=①-②-③-④-z1-z2=-8960万円
X=Y+Z=A+10460万-8960万=A+1500万
Xの上限は、6200万円であるため X=6200万とすると、
6200万=A+1500万
A=4700万
この場合の一次相続の相続税額
配偶者の相続財産4700万円(課税対象額のみ)に対する相続税額 0円
子供の相続財産(15720万-4700万)×10.5%=1157万円
この場合の二次相続の相続税額
二次相続の相続財産=6200万円
二次相続の相続税額=(6200万-4200万)×0.1=200万円
一次相続の相続税+二次相続の相続税=1357万円
事例1
(1)被相続人 甲 享年80歳
相続人 妻 乙 相続開始時点の年齢 75歳
長男 丙 〃 50歳
長女 丁 〃 45歳
(2)相続開始日 平成26年10月1日
(3)被相続人Aの相続財産及び債務
①普通預金 3,180万円
②終身保険の死亡保険金 3,000万円 受取人 配偶者乙
(内 生命保険金の非課税金額1,500万円)
③宅地A 更地(自用地)地積 800㎡ 相続税評価額 8,000万円
④宅地B 自宅敷地(自用地)地積 400㎡ 相続税評価額 6,000万円
小規模宅地等の特例
妻乙が、単独で宅地Bを相続するものとします。
この場合、特定居住用宅地等の課税の特例の適用を受けることができることによる、
宅地Bの評価減の価額は次の通りとなります。
6,000万円×240/400×0.8=2,880万円
小規模宅地等の特例適用後の宅地Bの課税価額 6,000万円-2,880万円=3,120万円
⑤居宅C 木造二階建て(宅地Bに建築)
床面積 200㎡ 相続税評価額 1,000万円
被相続人甲と妻乙の二人のみで、居住していた。
⑥債務 なし
(4)被相続人の課税価格の合計額 16,800万円
(5)遺産に係る基礎控除額 5千万円+法定相続人3人×1千万円=8千万円
(6)課税遺産総額 (4)-(5)= 8,800万円
(7)相続税の総額
妻乙の法定相続分に応ずる取得金額 4,400万円
妻乙の相続税の総額の基となる税額 680万円・・・ア
長男丙の法定相続分に応ずる取得金額 2,200万円
長男丙の相続税の総額の基となる税額 280万円・・・イ
長女丁の法定相続分に応ずる取得金額 2,200万円
長女丁の相続税の総額の基となる税額 280万円・・・ウ
相続税の総額 ア+イ+ウ=1,240万円
事例2
(1)事例1と同じ
(2)相続開始年月日 平成27年1月1日
(3)被相続人Aの相続財産及び債務
小規模宅地等の課税価格の計算特例
平成27年1月1日相続分から特定居住用宅地等の適用面積が240㎡から330㎡に拡大されます。
事例1と同じように、妻乙が、単独で宅地Bを相続するものとします。
この場合、特定居住用宅地等の特例の適用を受けることができるため、
宅地Bの評価減の価額は次の通りとなります。
6,000万円×330/400×0.8=3,960万円
小規模宅地等の特例適用後の宅地Bの課税価額
6,000万円-3,960万円=2,040万円
その他の相続財産と債務は事例1と同じとします。
(4)被相続人の課税価格の合計
16,800万円-(3,960万円-2,880万円)=15,720万円
(5)遺産に係る基礎控除額 3千万円+法定相続人3人×600万円=4,800万円
(6)課税遺産総額 (4)-(5)=10,920万円
(7)相続税の総額
妻乙の法定相続分に応ずる取得金額 5,460万円
妻乙の相続税の総額の基となる税額 938万円・・・ア
長男丙の法定相続分に応ずる取得金額 2,730万円
長男丙の相続税の総額の基となる税額 359.5万円・・・イ
長女丁の法定相続分に応ずる取得金額 2,730万円
長女丁の相続税の総額の基となる税額 359.5万円・・・ウ
相続税の総額 ア+イ+ウ=1,657万円
結論
相続税の基礎控除の減額による相続税の増加額
1,657万円-1,240万円=417万円
ただし、妻乙が(4)課税価格の合計額の1/2を相続した場合には、配偶者の税額軽減額が、事例1では、620万円となります。また事例2では828.5万円となります。このため、相続税の納税額の実際の増加額は、417万円の1/2の208.5万円となります。
江原経営会計事務所のホームページがオープンしました。
今後共、よろしくお願い致します。